ウサギは近年ペットとして人気が高く、犬猫に次ぐコンパニオンアニマルとしての地位を確立しつつあります。鳴かない、におわない、大きな生活空間を必要としないなど、現代のライフスタイルにマッチした動物といえます。しかしウサギは私たち人間はもちろん、犬や猫とは異なる食性をしているため、飼育に際しては理解が必要となります。今回はそのウサギさんの消化生理について述べたいと思います。
ウサギは盲腸で発酵を行う単胃草食動物です(牛などは胃が4つあるので複胃草食動物)。盲腸の中には多くの細菌が存在し、消化に大きな役割を果たしており、摂食物の約60%が盲腸内に入っているといわれています。栄養価の低く高繊維の草を、盲腸の細菌が分解してエネルギーにしており、ウサギはそのエネルギーを頂戴するという形になっています。また高繊維のものを食べ続けることで伸び続ける歯を削ることにもなります。そのため本来の食べ物でない高栄養の食物を与えると逆に消化不良を起こし、肥満や臼歯過長などのトラブルを引き起こすだけでなく、盲腸の細菌叢を乱し、重大な疾患を起こしうるのです。また盲腸の細菌はビタミンB群やビタミンKを産生しますが、これを便とともに排出し、ウサギはこれを摂食することでこれらビタミン群を補給します。これはいわゆる盲腸便と呼ばれ、便周囲にスライム状の粘液が付着していますが、これは摂食した際に胃酸でビタミンが破壊されないように保護するためのものです。
炭水化物を多く与えると、腸内の病原細菌が活発になり毒素が発生し死に至る可能性があります。また野菜は好きなウサギは多いですが、水分量が多く繊維は少ないためにウサギの栄養特性を考えると理想的ではありません。そのためウサギは、チモシーなどの乾草を主食とし、少量のラビットフードを与え、おやつなどはほんの少量だけ、というのが理想的になります。
以上がウサギさんの代表的な食性についてですが、実はウサギさんの病気の多くは栄養学的な管理の失宜であることが多いのです。そのためウサギの食事を理解することは病気の予防であり、健康に毎日を過ごすために大事なことなのです。
T.S.