南が丘動物通信

爪先にご注意を! 16年01月11日

爪は皮膚の分化器官で、真皮から連続して末節骨を覆う基本構造からなります。爪の疾患は爪や爪ひだ、あるいはその両方を侵し、感染症や免疫介在性、腫瘍性の病因によって発生します。

症状は腫脹や紅斑、痂皮、跛行、疼痛、爪ひだからの滲出を伴うことが多いです。

爪の感染症

鈍性の外傷や深爪による爪甲の外傷部位から細菌が侵入して発症することが多いです。これは1本の爪周囲で起きることが多いです。複数の爪床の感染症は、免疫抑制を起こす基礎疾患がある場合に生じます。犬では内分泌疾患(甲状腺機能低下症、副腎皮質機能亢進症)、猫ではウイルス感染症(猫エイズ、白血病)に関連して起こることがあります。爪の細菌感染症に対する治療法として、疼痛、紅斑、滲出物が見られなくなるまで全身性抗生物質を使用します。

落葉状天疱瘡

猫の対称性爪周囲炎のもっとも一般的な原因です。臨床症状として、顔面や耳介の落屑と重度の乾酪様(チーズ様)爪周囲炎が見られます。1本または複数の趾が侵され、疼痛を伴うことがあります。全身性の体調不良を示すこともあります。大部分は特発性ですが、薬疹によっておこることもあります。

診断は痂皮病変部や爪ひだからの滲出物のサンプル細胞診検査で、非変性性好中球や棘融解ケラチノサイトの検出などで行います。

治療法は免疫抑制療法でプレドニゾロンやクロラムブシるなどを用い、寛解が得られたら用量を漸減していきます。

犬のエリテマトーデス性爪栄養障害

犬の対称性爪疾患の最も一般的な原因です。この疾患で見られる爪床の境界型皮膚炎は細菌の二次感染を伴うことが多いです。臨床症状として、爪の脱落がみられ、一本の趾の病変として始まることが多いが、通常急速に進行してほかの爪も侵されます。跛行や疼痛が見られます。罹患した爪は再生しますが、しばしば変形し、柔らかくてもろいです。

診断は臨床症状および、抗生物質療法に全く反応しないこと、生検による境界型皮膚炎の確認によって行います。

治療法は必須脂肪酸やオキシテトラサイクリン、ナイアシンアミドの併用療法が挙げられますが、難治症例ではグルココルチコイドによる免疫抑制療法が必要とされます。

腫瘍

犬;高齢の大型犬種(ゴールデン・レトリーバー、スタンダード・プードルなど)で多く、扁平上皮癌、悪性黒色腫が非常に多いです。臨床症状として、罹患末節骨部の腫脹と疼痛、爪の脱落が見られます。局所への波及や遠隔部への転移が起こることがあります。有効な診断法は細胞診、生検です。レントゲン検査で末節骨の破壊像が確認されることもあります。また、転移の有無を調べることも重要です。

治療には罹患趾の完全切除が必要ですが、転移がある場合は予後不良です。

猫;肺の無症候性の気管支原発性癌や扁平上皮癌の転移性疾患が一般的です。多数の趾が侵されることが多く、潰瘍や趾節骨の破壊を伴います。有効な治療法はありません。

爪の病気といえども侮れないものもあります。ぜひ皆様の大切な動物には爪の先からチェックしてください。

M.M.