南が丘動物通信

胆泥 15年11月22日

胆泥とは、胆嚢内の超音波検査で、音響陰影を伴わない低エコー性で流動性のある泥状または砂状物として認められるものの総称です。胆泥の成分は、ヒトにおいてはコレステロール結晶やビリルビンカルシウム微細顆粒であり、胆泥は胆石形成の前駆状態と考えられていますが、イヌやネコにおいても同様であると考えられています。

胆泥の発生機序は十分に解明されていませんが、胆嚢収縮能の低下による胆嚢内胆汁うっ滞や、コレステロールやカルシウムなどの胆汁内成分の変化が発生の要因として有力であると考えられています。

 胆泥は、それ自体が胆嚢疾患というよりは、何らかの疾患に続発して発生している所見であることが多いと考えられています。イヌやネコにおいて臨床的に胆泥を認めやすい病因としては、胆嚢炎、肝炎、肝外胆管閉塞症、腸炎、膵炎、甲状腺機能低下症、副腎皮質機能亢進症などが挙げられ、中年以上のイヌで多く、超音波検査で偶発的に認められるケースも多いです。ヒトでは、胆泥の認められた患者に疝痛発作や急性膵炎、胆嚢炎などが認められたという報告がありますが、イヌやネコにおいては、現在のところ胆泥が直接的に他の疾患を惹起するかどうかは明らかではありません。しかし胆石症や胆嚢粘液嚢腫(特にイヌ)へと進行するとそれに伴い臨床症状を発現する可能性があります。

 胆泥の治療法は、治療そのものの必要性も含めて原因疾患によって異なります。肝外胆管閉塞や甲状腺機能低下症、副腎皮質機能亢進症など原因疾患が判明しているのであれば、その疾患に対する治療を行います。原疾患が明らかでない場合は、進行性の閉塞性黄疸示す速やかな外科手術が必要と考えられる肝外胆管閉塞を除き、まずは利胆剤や肝庇護剤などの内科的治療で経過を観察するのが一般的です。