南が丘動物通信

ネコの注射部位肉腫 15年08月02日

 ネコの注射部位肉腫とは、薬剤を接種した部位付近に悪性の腫瘍が形成される疾患です。これまでに注射部位肉腫と関連があるものとして狂犬病ワクチン、猫白血病ワクチン、FVRCP±Cワクチン、長期作用型ペニシリン、メチルプレドニゾロンなどが報告されています。これらの薬剤と肉腫の発生についてのメカニズムは明確には解明されていませんが、ワクチンについては混合されているアジュバントが、その他の薬剤については薬剤自体が注射部位に慢性炎症を引き起こし、その結果腫瘍が形成されると考えられています。
ネコの注射部位肉腫は非常に局所浸潤が強く、病理検査にて完全切除と診断された場合でも数ヵ月後に再発することもあります。また遠隔転移も10~24%起こるとされています。
 治療は、外科手術が第一選択となりますが、局所浸潤が非常に強い腫瘍であるため、腫瘍の大きさや浸潤度合を、CT検査やMRI検査にて術前に把握することが非常に重要となります。また、前述の通り、完全切除と判断された場合でも再発率が高い腫瘍であるため、術後に抗癌剤による化学療法や放射線治療が用いられることが推奨されます。また、最新の治療として、IL-2遺伝子を導入したカナリア痘ウイルスベクターを腫瘍を切除した付近に注射し、抗腫瘍免疫応答を促す方法が行われています。