南が丘動物通信

ウサギのトレポネーマ症 14年02月23日

 本症はウサギのスピロヘータ症や兎梅毒とも呼ばれる、Treponema paraluiscuniculiを病原体とする皮膚病です。
 交尾により感染が成立するので基本的に性病ですが、家庭飼育ウサギの場合は多くの場合、母子感染により感染を受けた個体が潜在的に保菌し、若齢期に顔面や陰部に皮膚炎を発症します。
皮膚病変は発赤、丘疹、浮腫、鱗屑、びらん、潰瘍が認められ、特徴的な角質の堆積や痂皮形成が見られます。皮膚炎症状が最も認められるのは鼻孔周辺で、他に口唇、眼瞼、陰部、肛門周囲などにもみられます。肉眼的に皮膚症状が著しくてもあまり痒みや痛みを伴わないことが多いです。母子感染の場合、発症時期は生後3ヶ月から1歳6ヶ月の間が多いですが、3~4歳で発症することもあります。
 多くの場合は肉眼所見で診断可能ですが、明らかな特徴的皮膚所見が得られない事もあります。その場合抗体検査を行うこともありますが、潜在感染の個体が多いため抗体陽性率が35%と高く、あくまで補助的な検査です。
 治療は抗生物質にて行い、通常数日の投与で症状は劇的に改善し、1~2週間で病変は消失します。しかし、早期に治療を中断すると再発が起き易いため病変が消失してから最低2週間は投薬を継続します。また、通常は潜在感染のまま無症候のままに推移することも少なくない本症が発症する因子として、免疫を抑制するようなストレスや基礎疾患に対する対策を考慮する必要があります。
下の映像のような皮膚病変が見られた場合はご相談下さい。