従来、犬の消化管粘膜下に発生する間葉系腫瘍の大部分は、平滑筋腫および平滑筋肉腫と考えられてきました。しかし、2003年にこれらの中に消化管間質腫瘍(GIST)が含まれていると報告され、獣医領域に新しい腫瘍の概念が加わりました。
GISTは大腸、特に盲腸に発生が多いとされています。(これに対して平滑筋腫は胃に好発するといわれています。)腹腔内の巨大腫瘤として発見されることが多いのですが、これは粘膜下腫瘤であるためサイズが大きくなるまで臨床症状を示さないためではないかと考えられています。
GISTは、外見上は平滑筋腫や平滑筋肉腫と類似しており、超音波検査やCT検査では鑑別が難しく、多くの場合は悪性であることを想定して外科的切除が実施されます。
またGISTは、c-kitと呼ばれる遺伝子に変異が認められるという特徴を有しており、不完全切除や再発症例ならびに転移症例では内科療法として分子標的薬の投与が考慮されます。ヒトでは分子標的薬であるメシル酸イマチニブが再発性ならびに転移性GISTの第一選択薬とされていて、犬においても効果が認められたという報告もあります。
H.B.