南が丘動物通信

血管肉腫 12年10月02日

血管肉腫

 血管肉腫は血管内皮細胞由来の悪性腫瘍で、脾臓、右心耳、皮膚や皮下に好発しますが、臨床的には脾臓の血管肉腫に遭遇するケースが最も多く経験されます。脾臓に腫瘤性病変が認めまれた際、ダブル2/3の法則が以前より提唱されています。すなわち、脾臓腫瘤の2/3が悪性で、そのうち2/3が血管肉腫であるとういう法則です。脾臓腫瘤の4/9、つまり約半数が血管肉腫であるということです。脾臓の血管肉腫は、突然の虚脱を主訴に来院されることが多い腫瘍です。腫瘍が破裂したために腹腔内出血により突然死を引き起こします。脾臓破裂をおこした症例では緊急手術が必要となります。
 血管肉腫は非常に侵襲性が強く、高い転移率を特徴とし、約80%で肝臓に転移し、その他、大網、腸間膜、肺など全身に転移病巣を形成します。また、貧血や血小板減少症、播種性血管内凝固(DIC)を高率で引き起こします。血管肉腫はこのような挙動をとる腫瘍のため、手術後無治療での中央生存期間は33日と報告されています。一方、手術後に化学療法を併用した場合の中央生存期間は240日といわれており、化学療法が奏功する腫瘍の一つです。
 しかし、可能であれば、腫瘍が破裂する前に発見し、手術を行い、化学療法を行いたいものです。早期発見であればあるほど長期生存が期待できます。その為には健康診断が何よりも重要になってきます。特に、血管肉腫の好発犬種であるジャーマンシェパード、ゴールデン・レトリーバー、ラブラドール・レトリーバーでは定期的な腹部エコー検査を強くお勧めいたします。