猫では年齢と共に腎臓疾患の発症率が増加し、慢性腎臓病は猫にとって切っても切り離せない疾患です。徐々にネフロンが破壊され、腎機能は低下し続けるために適切な管理が腎臓の寿命を延ばすことができると言っても過言ではありません。また高齢の猫では腫瘍や甲状腺機能亢進症などの他の疾患との併発疾患として存在しうるため、より管理が重要となります。
・水分摂取
まずは十分な水分摂取が基本です。消化吸収の末に代謝水という水分が発生するため、実は食事を取ることで水分摂取ができ、猫では食事から水分摂取しているものも多いといいます。猫では食べないことは危険な状態のため、食欲がないときには食欲増進剤を使ったり、また口から与えることが困難な場合は経鼻カテーテルを設置して食事を与えることも非常に大切です。
・食事性リン制限
腎からのリン排泄が低下することで高リン血症となり、これは血中カルシウム濃度を下げ、また低カルシトリオール血症も招くことで上皮小体機能を亢進させます。すると腎臓を含めた軟部組織に石灰化を生じ、腎障害をさらに助長します。そのため食事中のリンを制限する必要があります。それでも十分でなければ経口リン吸着剤を使用します。
・食事性蛋白の制限
尿毒症物質の多くは蛋白質が元となる窒素化合物であることから、蛋白質の摂取量を減量することで尿毒症症状の改善に繋がります。
・アシドーシスの補正
アシドーシスを補正することで腎臓の尿細管障害を抑制することができ、腎障害の進行を遅らせることできます。
・ナトリウム制限
腎不全では高血圧が合併症として現れるため、ナトリウム制限が有効といわれています。レニン・アンギオテンシン系を考慮すると、ナトリウム制限の際にはACE阻害薬を併用したほうが良いのかもしれません。
・食事性脂質
不飽和脂肪酸を添加することで血小板活性を抑制でき、腎機能の保持に寄与します。
以上のように、慢性腎臓病の猫では食事療法を行うことで腎臓を長持ちさせることができます。すべてを考慮した食事を作るのは非常に大変なため、一般的には腎臓病用処方食が推奨されます。猫の食事変更は月単位で徐々に行う必要があります。すべての処方食は獣医師の処方が必要ですので、処方食についてご質問があれば当院にご相談ください。
腎臓処方食は多くの種類があり、猫の好みで選ぶことが可能です。