南が丘動物通信

皮膚糸状菌症 12年02月14日

 真菌(かび)が皮膚の角質、被毛、爪などに定着することによる皮膚病を皮膚糸状菌症と言います。犬猫以外にもさまざまな動物に感染し、人にも容易に感染することから人獣共通感染症としても問題とされています。
 原因菌はMicrosporum canisが最も多く、他にもM. gypseum、Trichophyton mentagrophytes、T. rubrumなどです。猫ではM. canisが症状がなくとも被毛などに感染することで他の動物に対する感染源になることがあり、特に長毛種が感染源になりやすいです。感染防御力の低い子猫や子犬が感染することが多く、人でも幼児や子供が多いです。感染動物との接触により感染が起きますが、汚染された飼育環境から感染する例も多いと考えられます。
 病変は顔、前肢、後肢に多いとされますが、全身的に現れることもあります。楕円形の
脱毛、紅斑が特徴ですが、症例により脱毛、紅斑、鱗屑などはさまざまなので典型でなくとも疑わなくてはなりません。そのため炎症を伴う皮膚疾患と鑑別しなくてはなりません。M.canisであればウッド灯検査を行えば、感染被毛が蛍光色を発することが知られています。脱毛周辺部の被毛を引き抜き、真菌培養検査を行うことが非常に有用です。蛋白質の代謝により培地のpHがアルカリ性に傾くことにより、コロニーの形成とともに培地が赤く変色することで診断することができます。正確な結果を得るためには毎日培地をチェックすることが必要となります。
 治療はイトラコナゾールやケトコナゾール、グリセオフルビンなどの抗真菌剤を用います。菌を洗い流すためのシャンプーや、さらに再感染を防ぐための全身的な毛刈りが必要になることもあります。また飼い主様による飼育環境の対策も必要であり、手洗いの励行、他の動物との隔離、部屋の消毒などを行うことで蔓延や再感染を防ぐことができます。子犬、子猫、多頭飼育、小さなお子様がいるご家庭ではお気をつけ下さい。

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