脾臓の役割
脾臓はリンパ系最大の器官であり、その主な役割は以下の4つがあります。
①血液の濾過
脾臓は赤脾髄という部分で老化した赤血球や病的な赤血球、細菌などを除去しています。
②血液の貯蔵
脾臓の赤脾髄は赤血球や血小板などを貯蔵する役割もあり、循環血液量の10%以上が貯留していると報告されています。急激な出血などが起こると、脾臓が収縮し貯蔵している血液を駆出します。
③免疫機能
脾臓は白脾髄という部分で生体防御のための抗体を産生やリンパ球などの産生・成熟を行っています。また、赤脾髄でマクロファージによって細菌の貪食も行います。
④造血
胎児期には赤脾髄でも血液をつくっていますが、生後は主に骨髄で造血されています。しかし、骨髄疾患などで造血能に異常をきたした時は赤脾髄で造血が行われることがあります。
脾臓摘出を必要とする病気
一般的に脾臓摘出を必要とする病気には、脾臓の腫瘍や重度の外傷による脾臓破裂などがあります。脾臓疾患の症状は非特異的なことが多く、急性から慢性まで様々です。最も多い症状は突然の元気消失、嘔吐、体重減少、貧血などで、腹部の触診で脾腫(脾臓の腫れ)が認められることがあります。様々な脾臓疾患を鑑別するため、また手術を行えるかどうか評価するために血液検査、レントゲン検査、エコー検査などが必要で、場合によってはCTやバイオプシー検査を行うこともあります。脾臓からの出血により、腹腔内に血液が流れ出している場合は緊急手術が必要となります。
手術方法
手術は腹部の正中切開を行い、脾臓を確認、破裂や癒着がないか注意しながら腹腔外へ牽引します。脾臓に出入りする血管を結札・切断して脾臓を摘出します。当院では、血管の止血と切断を同時に行えるエンシールという機械を使用しているので、結札・切断するより大幅な時間短縮が可能となっています。
術後の影響
脾臓を摘出すると、出血性ショックや激しい運動に対する耐性が低くなるという報告もあり、体に全く影響がないとは言えませんが、基本的に脾臓の機能はほかの器官で代償できるものが多いため、脾臓を全摘出しても日常生活にあまり大きな影響はありません。