ウサギの臼歯不正咬合による過長症は、ウサギで最もよく見られる疾患の一つです。
その発症の原因は、多くの要因が複合的に関わっていることが多いですが、その中でもウサギの小型化が最大の要因であると考えられています。特に1~2kg程度のウサギはそれ以上のウサギに比べて注意が必要です。また、ロップイヤーよりも立ち耳のウサギの方が、雌よりも雄のほうが発症しやすい傾向にあります。この他に、先天的な構造異常や新生子期の栄養障害、幼齢期の外傷など様々なことが素因として考えられます。
以上に挙げた素因よりも最も重要なのが食事内容です。すなわち、ラビットフードや穀類、種子類を多食して乾草を食べないもしくは不十分にしか食べなければ発症しやすく、乾草を多く食べていれば発症しにくいという事です。よって、幼い頃からの徹底した食事管理が非常に重要となります。
症状は、急激な(まれに徐々に)食欲低下、飲水困難、流涎、口をクチャクチャさせる、といった事がよく認められます。ほとんどの場合、元気は低下していません。特に本症は本当に食欲が低下しているのではなく、口の中が痛いために食事に興味を示すが食べられないというのが特徴です。しかし、本症による食欲不振、飲水困難が長期化すると、腸管うっ滞や肝障害、腎障害などを併発する恐れがあり、その場合は元気はなくなり、食欲も低下しています。
治療は、尖っている臼歯を削るもしくはぐらついているようであれば抜歯を行います。併発症がなければ治療には非常に良く反応し、すぐに食べられるようになりますが、ほとんどの場合で再発は免れません。
臼歯不正咬合の予防には、幼い頃からの食事管理が非常に重要となります。食事は必ず乾草を主食とし、ペレットフードは成長期には体重の2~2.5%、維持期には1.5%以下、そして4~5歳を過ぎたら1%以下を目安として制限し、ハードタイプのペレットは避けるべきです。
日々の食生活によって発症を抑えられる可能性がある疾患ですので、食事には十分に気をつけて下さい。