南が丘動物通信

犬の前庭疾患 11年02月01日

眼および頭部の位置を正常に保ち、体のバランスを正常に維持するための神経路を総称して前庭系と呼び、末梢神経系と中枢神経系に分けられます。犬の前庭疾患は、末梢神経障害もしくは中枢神経障害を引き起こす他の疾患によって二次的に起こります。
前庭系が障害されると、斜頚、眼振、斜視、旋回運動、運動失調、平衡障害(ふらつき)などの症状が見られます。嘔吐や食欲不振を併発する場合もあります。
末梢神経障害による前庭疾患の原因としては、特発性前庭疾障害、中内耳炎、頭部外傷、耳道の腫瘍、中耳ポリープ、甲状腺機能低下症、アミノグリコシド中毒などが挙げられます。中枢神経障害による前庭疾患の原因としては、髄膜脳炎、頭部外傷、脳腫瘍、脳血管障害、メトロニダゾール中毒、寄生虫の迷入などが挙げられます。
前庭疾患による症状は他の脳疾患と比べて特徴的であるため、前庭系の異常を疑うことは比較的容易ですが、原疾患を特定することは困難である場合が多いです。血液検査、神経学的検査、耳鏡検査、頭部のX線検査、CTあるいはMRI検査、脳脊髄液検査などを行うことによって原疾患の特定を行います。
治療は原疾患に即して行います。原疾患が特定できない場合は輸液などによる支持療法が行われます。