今回で第9回目となる菅野先生による循環器セミナーの「犬と猫の心筋症」についての講演会がありました。
心筋症とは心機能障害を伴う心筋疾患の総称であり、その分類は
肥大型、拡張型、拘束型、不整脈源性右室心筋症、分類不能型、特定心筋症などがあります。
今回はその中でも肥大型(HCM)について焦点を当てたいと思います。
雑音が聴取できないHCMは30-40%とも言われており、正常と思われる103頭の猫に対してうち16頭が心筋症であったという報告があります。
猫において特に多いとされる発症年齢は1−4歳といった若齢期であると言われており、
臨床症状としては鬱血性心不全に伴う呼吸促迫や食欲不振、運動をしなくなるといった症状です。
診断は①心臓の超音波検査による心臓の筋肉の肥大があるかどうか確認すること
②心筋障害がある場合は血液中のバイオマーカーを測定することで早期発見できる とも言われています。
H.F
廉澤 剛 先生 酪農学園大学獣医学群獣医学類 伴侶動物医療分野 教授
(付属動物医療センター長、腫瘍科/軟部外科 科長)
第4回基礎からしっかり学ぶ臨床腫瘍学「手術計画」
腫瘍学において外科療法とは腫瘍が限局している場合には、極めて効果的な局所療法ですが、外科には大きく分けて3つの目的が挙げられます。1つ目は「根治的手術」2つ目は「緩和的手術」。3つ目は「予防的手術」です。なかでも「根治的手術」の適応要件としては、"腫瘍が限局していて切除によって重要な機能をそこなわないこと"。"遠隔転移率の低い腫瘍であること"。などを満たす場合に限られます。切除する際に重要なことはサージカルマージンをしっかり取ることです。特に悪性腫瘍は周囲の正常組織に浸潤しており、真の腫瘍の広がりは認識している腫瘍の広がりより大きいため、切除する腫瘍との距離感が重要です。大きいサージカルマージンを必要とする代表的な腫瘍に肥満細胞腫があります。肥満細胞腫のサージカルマージンは筋膜をつけて摘出とありますが、これは筋膜が腫瘍が広がるのを抑えるバリアの機能をしているからと考えられます。ただ、腫瘍の大きさや発生部位によっては十分なサージカルマージン確保できない場合があり、このような場合は切除縁に放射線を放射したり、化学療法いわゆる抗癌剤を用いて抑える方法があります。
今回は腫瘍の外科的治療に関して基礎的なお話を聞くことができました。ペットの寿命が伸びている一方で腫瘍の症例数も確実に増えています。今後、腫瘍を治療をする上で考えるべきことはたくさんありますが、提案の一つとして挙げられる外科的治療に関してオーナー様にしっかり説明できればと思います。
K.G
教科書に書かれていない臨床心電図の実際
竹村 直行先生 日本獣医生命科学大学獣医内科学研究室第二 教授
今回のセミナーは心電図の取り方とアーティファクトとの鑑別方法、異常所見がみつかったときに診断を確定させる読み方・追加検査の仕方、治療法を竹村先生の実際の症例から教えていただきました。今回のセミナーは対話形式で順番に参加者が見解を発表するもので、緊張感もありとても楽しいセミナーでした。
心電図は心臓の電気的な活動を解析するものです。しかし体の動きや大小によて見え方は常教科書通りにいかないことが多々あります。その時に知りたい情報は何なのかをきちんと理解していれば次にすべき検査の工夫・方法も見えてきます。今回は実際の症例の症状・心電図から知りたいけど明らかになっていない点を洗い出し、測定法の工夫の仕方や追加検査の選び方、所見の解釈を学びました。当院では術前検査として心電図を撮らせていただいております。その意義や所見を飼い主様により分かりやすく伝えられるように、今回のセミナーで得た知識を活かしていきたいと思います。K.Y