南が丘動物通信

10月21日 葉月会 動物医療グリーフケアセミナー 16年10月21日

第四回 動物医療インフォームドコンセント

獣医師・グリーフケアアドバイザー 阿部 美奈子先生

今回、グリーフケアの観点からインフォームドコンセントをテーマに講演していただきました。獣医療におけるインフォームドコンセントとはある医療行為に対して獣医師から十分な説明を受けた上でのご家族の同意を意味します。

しかし例え診断や治療計画、治療のメリット、デメリットを正確に説明できたとしても獣医師とご家族の間で行き違いが生じてしまうことがあります。そういった行き違いは獣医師がご家族の目線に立たずご家族と一緒になってペットにしてあげられることを考えていないために生じてしまいます。

 例えば重症であるペットの病状を明かされ、ご家族がショックで頭が真っ白の中、淡々と治療方針を説明しても理解は得られません。今のペットのおかれている状況について一緒に共感し、ご家族が病状について聞く準備が整ったうえでインフォームドコンセントしていく必要があります。

 病気についてご家族に理解してもらえるような説明も大切ですが、それだけでなく自分が飼い主だったらどう感じるかを常に意識しながらインフォームドコンセントできるように心掛けたいと思います。

Y.I

10/22 HORIBA小動物学術セミナー 16年10月20日

「ここがポイント!免疫介在性血液疾患の治療」

鹿児島大学共同獣医学部臨床獣医学講座伴侶動物内科学分野

高橋 雅先生

 今回のセミナーは免疫介在性血液疾患の治療について、免疫介在性溶血性貧血(IMHA)と免疫介在性血小板減少症(IMT)の診断や治療法を講義していただきました。

 IMHAはシーズー、アメリカンコッカースパニエル、ウエルシュコーギーに多い疾患で、診断には球状赤血球の有無、赤血球自己凝集、直接クームス試験などが有用とされています。IMHAの死因は肺動脈血栓塞栓症、貧血、敗血症、DICなどがあり、それらに対する治療が必要と考えられます。血栓塞栓症に対する治療には血栓溶解治療、抗血小板治療、抗凝固療法などがあり、それぞれの作用や利点などについても詳しく説明していただきました。

 IMTはコッカースパニエル、トイプードル、スタンダードプードルに多く、止血異常に伴い様々な症状が見られます

 今回のセミナーでは診断のポイントや止血剤に関する話などをお話していただき、大変勉強になりました。

 短い時間の中で二つの病気に関する重要なポイントを説明していただき、今後の診察の参考になりました。

D.T

10月14日 葉月会 第12回竹村先生セミナー 猫の肥大型心筋症(前篇) 16年10月14日

猫の肥大型心筋症 (前篇)

日本獣医生命科学大学 臨床獣医学部門治療学分野1・教授 竹村直行先生

今回は猫の心疾患として最も遭遇する可能性の高い肥大型心筋症、前篇ではその病態生理について講義していただきました。

犬とは心不全の症状の出方が異なることに猫では注目しなければなりません。発咳は猫ではあまり見られませんし、左心不全でも胸水が貯まることを特に覚えておかなければなりません。また猫の心臓病についての重症度の分類がまだあまり明確になっていないのも問題と感じました。また猫では肥大型ではなく拘束型心筋症というものも存在し、その定義が分かりにくかったのですが、左心室の重度の拡張障害、心内膜の肥厚など分かりやすく説明して頂きました。

次回はまた後篇があり、治療法について講義して頂きます。日常的に診察する機会の多い病気であり、重要なポイントを再確認したいと思います。

T.S.

9月25,26,27日 第18回日本臨床獣医学フォーラム2016年年次大会 16年10月09日

2016年9月25日~27日に東京で開催されたJBVPに参加してきました。多くの先生方、獣医師、看護師、学生の参加する活気ある大会で、興味深いお話がいくつもありました。

犬の胆泥症および胆嚢粘液瘤の疑いのある症例に対してどういう治療をしていくかというテーマに対して、東京大学の大野先生、宮崎大学の鳥巣先生をコメンテーターとして迎えたディスカッションが特に面白かったです。

胆泥は、エコー検査をすると犬ではよくみられます。大野先生は、胆泥は可動性の胆泥と非可動性の胆泥に分けられ、非可動性の胆泥は細菌感染や胆嚢炎を起こしている可能性があるとおっしゃっていました。基本的に胆泥症だけでは肝酵素値の上昇は認められず、肝酵素値が上昇しているということは何らかの肝実質の異常があるということになります。胆嚢疾患で怖いのは胆嚢破裂が起こるということですが、胆嚢破裂のリスクとエコー画像における派手さとは相関がないようです。どの段階で胆嚢摘出に踏み切るかというのが一番の論点になったのですが、鳥巣先生は、今ではあまり積極的に摘出は行っていないとのことでした。エコー上で明らかなキウイフルーツ状であっても破裂するしないは分からないし、術後に肝酵素値が上がってしまう症例も少なくないからだそうです。胆嚢粘液瘤で、肝酵素値の上昇が認められる症例に対しては、異常が起きたらすぐに連れてきてもらうようにしているとのことでした。

摘出しない場合は基本的にはウルソ酸と抗菌薬の投与、エリスロマイシンに関しては効果のある症例もあればない場合もあり、統計的にも有意差は出ていないそうです。食事療法に関しては低脂肪食ですが、最近は低炭水化物も効果があるのではと言われているそうです。

M.M.